新型課題の救世主!? コミュニケーションを支える言語聴覚士(Speech Therapist)

 

 

 コミュニケーションが人間にとって、最も大切な社会生活基盤の一つとなっていることは誰も疑わないだろう。今日は、その人間にとっての重要な営みを支えるスペシャリスト「言語聴覚士」について紹介したいと思う。

 

コミュニケーション改善のスペシャリスト

 

 平たく言うと言語聴覚士とは、話す、聞くといった(時にはそれさえも超えた)コミュニケーションをサポートする役割と言ってもよさそうだが、専門的な見地からは以下のように説明される。

 

”コミュニケーションは,聴覚器官で受け取った情報を脳の言語領域で情報処理し意味を理解したあと,そこで生まれた思考を言語記号に変換し,さらに音声として表出するため発声発語器官を動かすという流れになっている。言語聴覚士は、これらの情報の入力から出力までのどこに問題があるのかを検査・評価し,コミュニケーション改善のための指導を行う。” *1

 

 特に、医療、福祉、教育などの現場で、何らかの事情から言葉を発したり聞き取ったりすることが困難になってしまった人のコミュニケーションを改善する仕事を担う。特に高齢化の進む近年では、摂食・嚥下(食べる・飲み込む)に関する問題や、記憶や認知に関する成人の言語障害を持つ人を対象としたケアも重要視され、言語聴覚士の担う役割も広がってきている。

 

まだまだ、課題も…

 

 上記で述べたように、言語聴覚士の役割が社会にとってなくてはならない存在になっている一方、日本においては未だ言語聴覚士をめぐる様々な課題が存在している。

 

重要性が十分理解されていない?

 言語聴覚士という資格があることを知っている人は、それほど多くないのではないだろうか。1997年から国家資格となり、比較的新しく歴史も浅いため、その重要性も世の中にはまだ十分認識されているとは言い難い。特に高齢化やストレスによって、聞こえやコミュニケーションに関する悩みを持つ人が増えていくであろう日本において、その重要性はますます高まっていくはずだ。

 

人手不足が深刻?

 社会的認知度が低いゆえなのか、日本では圧倒的に言語聴覚士が足らないという現状がある。一般的に人口の5%(つまり現在の日本では650万人)に言語障害を持つ人が出現すると言われている。2000年時点で36000人の言語聴覚士が必要とされている状況に対し、現在でさえ27000人の言語聴覚士しかおらず、人手不足が深刻化している。アメリカでは15万人の言語聴覚士が存在し、その日本との比率(米:日)は20:1となっている。

 

新たな課題の救世主として

 

 人が社会において、生き生きと自己を実現・表現するためのコミュニケーション基盤を支える言語聴覚士。物質的な豊かさを実現した日本人にとって、人とのつながりを生涯にわたって感じるためのケアはより注目されるべき新たな課題なのではないだろうか。まさにその課題に向き合う言語聴覚士の存在は今後もますます必要とされていくに違いない。

 

 

 

 

参考資料

 

*1

言語聴覚士教育の現状と今後の課題」

http://ci.nii.ac.jp/els/110009537005.pdf?id=ART0009985425&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1471918717&cp=